先日は、
2024年度(令和6年度) 千葉県公立高校入試問題 分析(英語)出題方針の分析
という記事を書きましたが、今日はその続きです。
そもそも、
千葉日報に今年(2024年・令和6年)の公立入試問題があるのですが、そこに出題方針なるものがありました。そして、まずがそれを分析しておきたいと思い、その分析を書いたのでした。ちなみ出題方針についてはリンクを貼っておくので、本記事に興味のある人はまずそれを見ておくといいかもしれません。
(出題方針リンク;https://www.chibanippo.co.jp/pdf/english_policy2024.pdf )
説明しやすくなるように、以下にテキストでも引用します。
2 「聞くこと」の領域では、音声を通して、対話文やまとまりのある文章から話し手の意向や大切な事柄を聞き取り、適切に判断して 答える力をみることができるようにする。
『令和6年度「一般入学者選抜」 学力検査英語科出題方針』より
各領域のうち、まず「『聞くこと』の領域」についてです。
「①音声と通して」「②対話文」や「③まとまりのある文章」から「④相手の意向や大切な事柄」を「⑤聞き取り、適切に判断して答える力」をみることができるようにする。
とあります。
①は当然です。「聞くこと」の領域ですからね。ポイントは②とか③です。また出てきましたね。対話文。実際の2024年度入試でのリスニング問題における、「②対話文」の割合は、聞き取り原稿8本中、実に5本が「②対話文」でした。つまり、聞き取り原稿全体の62.5%の原稿が「②対話文」となっています。
そして、大問構成からみると大問の1はNo.1~3まですべて対話文であり、大問の2と3はNo.1のみ「②対話文」で、それぞれのNo.2は「③まとまりのある文章」でした。大問の4番までが聞き取りなんですが、大問の4番の原稿は「③まとまりのある文章」1本だけした。
何が言いたいかというと、より易しい問題として、「②対話文」が位置付けられているということを言いたいのです。そして、リスニングの原稿を確認してもらえるとわかるのですが、
文字数的には大問番号が大きくなるごとに増えていく感じです。そして「③まとまりのある文章」についての具体的な内容としては、これもリスニング原稿を読むと、大問の2と3のNo.2は、日常的な出来事を過去形で客観的に語っていくもので、短めの物語文のようなものでした。大問の4はそれらとことなり、短めの発表(プレゼン)を聞くような感じです。
そして、問題と解答を見ていくと、まさに「④相手の意向や大切な事柄」を「⑤聞き取り、適切に判断して答える力」を見ることのできる問題になっていることがわかります。つまり、内容を難易度の観点から考えると「対話文」<「物語」<「プレゼン」の順で難易度が高まるイメージです。これらのうち「対話文」と「プレゼン」は、コミュニケーションに直接かかわるものであり、「物語」に関しても他者の行動や思考を英語で理解するという意味では、コミュニケーションに関わるものであると言えるでしょう。
つづいて、出題方針の3です。
3 「読むこと」の領域では、日常的、社会的な話題に関する文章や図表、イラスト等から、必要な情報、概要や要点を読み取り、適切に答える力や、読み取った情報を基に思考し、判断する力をみることができるようにする。
『令和6年度「一般入学者選抜」 学力検査英語科出題方針』より
以上が引用文です。
「①『読むこと』の領域」では「②日常的、社会的な話題」に関する「③文章や図表、イラスト等」から、「④必要な情報、概要や要点を読み取り、適切に答える力」や、「⑤読み取った情報を基に思考し、判断する力」をみることができるようにする。
今度は、「①『読むこと』の領域」になりました。何を読むのかというと、「②日常的、社会的な話題」に関するものを読みます。「日常的」とは、実際の問題に即してみると、日常で起こり得そうな話題、日常でありそうな話題ということです。そして、「社会的」とは、どういうことかというと、わかりやすいのはSDGsに絡むような話題や国際社会に関する話題です。それと社会性の感じさせるもの。
そもそも、われわれ日常が、社会と遊離した状態じゃないので、日常的=社会的ともいえる場合もあるかと思うのですが、個々では一応分けて考えます。
「日常的」な話題と「社会的」な話題の割合を実際の入試問題で見ていくと、大問の5は小問ごとに対話文があるのですが、「日常的」。大問の6は英作文で、小問が2つあるのですが、一つずつイラストがついていますが、一つは日常的かつ社会的、一つは日常的です。大問7は小問2問それぞれになのですが、いずれも日常的かつ社会的。大問8も日常的かつ社会的。大問9も日常的かつ社会的ともいえる。
11個の文や文章・イラストなどのうち、すべてが「日常的」な要素をはらんでいます。また、短い対話文などは社会性をあまり帯びないのですが、長い対話文だとどうしても社会的な要素が垣間見えてきます。ちなみに、はっきりと「社会的」な感じのするものは11個中5個でした。中でも、大問7・8の長文は、学校でのプレゼン(発表)場面という受験生にとっては、かなり日常的な場面ながら、そのプレゼン内容が実に「社会的」なものになっていました。
さて、読み取らなくてはならないのは「③文章や図表、イラスト等」です。文章だけじゃないのです。したがって、けっこう幅広いリテラシーが求められます。
そして、ここで求められる力は、リスニングと違い2つあります。一つは、「④必要な情報、概要や要点を読み取り、適切に答える力」です。もう一つは「⑤読み取った情報を基に思考し、判断する力」です。
「④必要な情報、概要や要点を読み取り、適切に答える力」は、細かく見れば、さらに2つの力が求められていると言えます。「④ー1必要な情報、概要や要点を読み取」る力と「④ー2適切に答える力」です。前者は、読解力であり、後者は、解答力です。インプットとアウトプットと言い換えてもいいでしょう。
「⑤読み取った情報を基に思考し、判断する力」は、思考力と判断力です。
つまり、「読むこと」の領域で求められる力は、インプット、アウトプット、思考力、判断力です。ちなみに、「聞くこと」の領域では、「⑤聞き取り、適切に判断して答える力」が求められますが、これは聞き取る力と判断力と解答力が求められます。言い換えると、インプットとアウトプットと判断力です。
もう少し図式的にすると、千葉県の公立高校入試では
「聞くこと」=インプット→判断→アウトプット
「読むこと」=インプット→判断→アウトプット or インプット→思考→判断→アウトプット
という力が求められるということです。思考力というと難しいですが、現行のテストを見る限りはそこまで高い思考力が求められているわけでもないです。
そして、特に勘違いしてほしくないのは、思考判断が求められるのは、インプット後だということです。つまり、読み取った後に判断し、思考するのです。読み取りのために施行するのではありません。英語のできない生徒は、単語力や文法力のなさを思考力でカバーしようとすることが多いのですが、ここで言う思考とはそういう思考ではありません。問題に対する思考なのです。
単語がわからないから、文脈からじっくり考えて、推理してなんてしていては、正直、英語はダメです。単なる文や単語なんかは、ほとんど秒で読み解けないと、本当に時間をかけて思考しなくてはならない部分で必ず時間が無くなります。
という意味では、「聞くこと」「読むこと」の以前に、「単語」「文法」の知識、技能が必要なわけで、そこが、そもそもダメな場合は、「聞くこと」「読むこと」の力すらまともに発揮できないということになりかねません。
少し長くなったので、今日はここまでにしたいと思います。